[型の極意を封印する前に]
伊藤賢二
2012年10月21日、曽我川体育館で『型のセミナー』が開かれた。
参加者は80人弱だったが、充実した3時間だった。2~3日間かけてやったら「尻切れトンボ」で終わらなかったと思う。
両膝・両肘に障害を持つ70歳の講師が翌日から右膝が曲らなくなり、3日間静養したとか…。
(初伝)
しこ四股を踏み、その後当り稽古を受ける。助走をして当ってきた瞬間「前屈立ち」で ― 膝抜きと同時に腰を前に突き出す ― と楽に受けられる。
この「コツ」を突きの時にに使うと、体重の乗った攻撃ができる。((働きのある前屈立ち))又、受け返しを、「前屈立ち」でワン・ツーを攻めたら、「後屈立ち」で受ける。それが一つの流れになるまで反復するのです。後屈立ちとは前足を支えに使わない事を身体に浸透さす為に、手で受けながら、軽く水月を止め蹴りする癖をつけると良い。
軸足に乗り切れていない者には二度蹴りをさせて「ソッ」と着地さすようにすると良い。
10kgの携帯砂袋をいくつか作製して、人体の急所に構えてピンポイントで位置や角度を確めながら反復稽古をする。当てる手や足のコンタクトポイントを変えて、あるいは踵で、あるいは中足で、あるいは刺拳で…。
身体運動はイメージが大切です。インパクトはどこか。その寸前で力を抜くのです。その瞬間は丹田に力を入れて、逆に肩の力を抜いて打ち抜くのです。受けミットは少し浮かして(体から離して)持つのも良い方法と思う。(打ち手にしっかりと打ち抜く癖をつけさせる為)
(中伝)
自分が今行っている動作の意味を理解する為に、相対で分解組手を行います。(平安Ⅱ~Ⅴ)、(撃砕小)、(最破)その他普及しているものをやる。3人1組になり、2人で分解組手をして1人が型をする。最初と最後を合せるように行うと良い。ローテーションで場所を変わるのが良い。イメージの苦手な者でも、分解組手ができるようになると、見ている人に動作の意味が伝わる演武となります。(型のクオリティQualityが向上する)
分解組手をやらない人の型には、働きの無い動作が多い。平安Ⅱの②の動作で中段をを受ける動作が無い。平安Ⅱの⑲~⑳の「下段払い(段)、上段刺手受け」は相手のクイック突きに対処する技なので「0秒2」ぐらいで動作をする必要がある。その間に引き手を入れる生徒が居るのでビックリしている。(全くナンセンス)
分解組手も練習せず働きも学ばず「かたち」だけ真似て上級種目だけ行う者が何と多い事か。
「楷書」を練習せずいきなり「行書」や「草書」をするのに等しい。基礎学力の無い「ニセ」大学生の事を「天プラ学生」と言うように、実力の無い「かたちだけの者」を天プラ空手と言う事にする。
そして「演武」と呼ばず「演舞」と呼ぶ事にする。
(総伝)
型の完成を目指す者なら、古伝の体捌や足捌を稽古して欲しい。鼻緒の有る下駄や草履をはかない白人にはできない同側歩行を習得して欲しい。ナンバ歩行は見た目遅いが、とても速い躱しが可能になる。
近代柔道がシャクリ(腰を開いて戻す)動作を行うようになった。初代若乃花の「ゆり戻し」のような使い方だ。引力を味方にした「膝抜き」や「倒木」を使うと技がとても速くなり、起こりを読まれなくなる。―
例えば観空の騎馬立ちの入り方。
(おわりに)
ピアノやクラッシクダンスを習うように「ナーバスNervous」に且つ「真剣」に型に取組もうとする受講生が見当たらない。「生徒の質」の問題か「価値観」のせいか。
― 多分それら両方と思う。
「How to Kata」と「What is Kata」の両面から真剣に取組んできた者にとって寂しい。1mmの誤差無く全身のパワーで急所を打抜きたいと思っていたのですが…。
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